6/5 20:30 UP!
夜が深いほど話せること
23時を過ぎてから来た方の口の動きは、昼に来た方とまったく別です。
昼の口は、まだ社会の用事を引きずっています。明日の予定、今日の連絡漏れ、職場で言いそびれた一言。それらが言葉の手前でちらつく。だから、話が浅いところで終わります。
夜が深くなるほど、社会の用事は遠ざかっていきます。残るのは、自分でも整理がついていない、輪郭のない話ばかりです。話していくうちに、自分が何に困っているのか、たった今、輪郭になっていく。話し手も、聞き手も、その輪郭ができていくのを一緒に見ています。
それは、深い時間にしか起きない種類の会話です。
私はそれを引き出そうとはしません。引き出そうとすると、たいてい引っ込んでしまう。私は黙って、湯気のように口元に手を寄せたり、ふっと笑ったり、相づちを打ったり、それだけをしています。話したい方は話す。話したくない方は話さない。どちらでも、夜は同じ深さで部屋に降りてきます。
深夜の予約を取った方は、たぶん、深い話を持ってきています。それを、こちらが先に評価しないでいたいと思っています
たけと




